5月18日深夜

午。朝までビールを飲み、予定では3時過ぎまで寝ているつもりであったのに電話に起こされる。15分程の通話後、二度寝する気力が湧かずシャワーを浴びて出かけた。本当は学校へ行くはずだったんだけど、今日はとにかく休みたかった。
近所をうろうろしているとカミオさんに会った。カミオさんは姉の同級生なのに今ではボクの同級生という不思議な人である。同じ高校、同じ大学、元同じバイト、今年で25歳、付き合いはもう3年ほどになる。趣味が合い、同じく25歳のアゼチさんと3人でよく飲みに行く仲。そんなカミオさんが「就活してる?」という電話をかけてきたのは今年の2月のことだった。驚いた。カミオさんは何でも器用にこなし、働かなくても十分に収入はあり、家に仕送りまでしている人で、就職とは無縁の人だと思っていたからだった。そんなカミオさんとひさしぶりに会って「就活どうですか?」と尋ねたところ、「決まったよ」という返事。カミオさんが働く姿はとても想像できなかったが、とにかくめでたいことだなと思ったのでボクはめでたいですねと言った。でもボクの口調があまりめでたくなかったのでカミオさんは「はは、ありがと」としこたま微妙な顔をしていた。
カミオさんと別れて、とぼとぼ歩いていると口をぽかんと開けたヤンキー風の男性が向こうから歩いてきた。そして擦れ違った刹那、そのヤンキーさんは煙草とライターを落としていった。ボクは慌てて、でもなんだか声をかけるのが怖ろしかったので、「あ、あの…」と蚊の鳴く様で声でヤンキー風の男性を呼びとめ、落としましたよというジェスチャーをした。すると男性は口をぽかんと開けたまま無言でボクに手を差し出してきた。拾え、ということだと理解してボクはしゃがみ込んで煙草とライターを拾い、手渡した。すると男性は口をぽかんと開けたまま、「おう」と小さく言って去っていった。何か釈然としない気持ちは残ったけれど、そういうことなんだろうと思い空を見上げ口をぽかんと開けた。残念ながら彼の気持ちや生き様は全く理解できなかったが、彼が幸せであることはわかったよ。
そうこうしているうちにバイト先から電話があって「人がいねえから来てくれると大変助かるよ、オレは」と言われたので手伝いに行き、3時間くらい働いて帰りにビールを2杯だけ飲んだ。あと鯛の唐揚げを食った。働く、飲むのルーティーンはボクにとってのアルゴリズムなんだと再確認した。
就活はもうすぐ終わる。残りは4社。鯛の唐揚げ美味かったからそんなことはどうでもいいかなと思う。口をぽかんと開けてたら幸せになれるんだよ。ぽかんぽかん。