5月15日夜

ぷーんと酢飯の匂いがする葛飾の某商店街をとぼとぼ歩き、「70年の歴史に幕!閉店セール!」と横断幕の貼られた趣味の悪い洋服だとかブラジャーとかが店頭にじゃらじゃら掛けられた店を横目に、ふひひと笑う。左手には線路。置石されてもおかしくねえんじゃのってくらい低い白い柵が延々と伸びていて、はん、古めかしいね、京成線ってやつぁ、なんて嘯いて、またとぼとぼ歩く。
最終面接は2対5で、一緒だった女の子がとても楽しい人だった。こういう人がこの業界に相応しいんだろうなと思った。「一緒に働きたいね」って言ってくれた。はは、あんた良い人だね、そういう人って嫌いだよ、自分が惨めになるからね。
人事の方が28340円の入った封筒をくれた。交通費だって。それに対してボクは「いりません」と言った。何故なら移動に28340円も使ってないだもん。バス往復で1万円。だから28340円を受け取ってしまうと18340円を不正に受領、詐欺になってしまう。だからボクは「いりません」と言ったんだけど、人事の方はにっこり笑って「じゃあ、残りは前回の面接の時の分です」と言った。にゃんにゃん。なんて素晴らしい会社だろう。この会社で会った人で優しくない人なんて一人もいなかったよ。
で、ボクはどんどん惨めになって、京成線から半蔵門線田園都市線を乗り継ぎぼんやりと電車に揺られ揺られ。そうこうしていると電話が鳴って、あいあいと出ると「わたし、マッチ」という女性の声。まっち…?近藤真彦さんに知り合いはおらんよ。マッチさんには「ろうそく50本あるよ」とだけでさっさと電話を切られてしまった。ろうそく?マッチじゃなくって?へえ、ろうそく。何が?
午後4時。電車を降りると途端に雨で慌てて本屋に入る。ポケットをごそごそ探ると昨日まであったはずの2千円がそっくり無くなっていて、ちゃらちゃらした銭しか無い。そや、電車賃が1180円もしたんや。そやそやそや。ってカバンの中には例の封筒が。本当だったらチェー万円しか無いはずなのに封筒には28340円。18340円は言わば拾った銭、泡銭、悪銭。よっしゃ。うん。使おう。と思った。本買った。途端に後悔。や、これは自分への誕生日プレゼントさ。年中プレゼントまみれだけど。
さて、22歳になる瞬間はどう過ごそうか思案中。過去4年くらいの日記を見返すとコンビニか、コンビニで買ったご飯を食べながら部屋で一人かだった。今年はコンビニ弁当を食べながら公園か。金あるし六本木に行って恋でもしようか。ヒルズに。
終わる、終わる。寒いぜ、東京。